ヒューストン美術館の特別展示に関して








ヒューストン美術館では、今現在Pipilotti Rist というスイスのアーティストの特別展示が9月まで展示されちます。一昨年草間彌生さんの特別展示があったのですが、最終日に行ったら前売りも完売していて、見れなかったという屈辱があり、今回は早めに行こうと決めたのと、美術館などでゆったり芸術鑑賞するような時間と心のゆとりを持とうと決めたので、美術館の会員にもなり、早速行ってきました。ちなみに、美術館の会員は年会費は個人ですと$60、二人分だと$80、家族会員ですと18歳以下のお子様を含めて、大人二人で$95とお得です。この会員費で年間の特別展示も含まれて、常時展示なども行きたい放題ですし、美術館のパーキングの割引や、ミュージアム関連の場所(RIENZIというメモリアルにある素敵なガーデンと建物)の割引なども含まれています。

このPipilotti Ristさんの展示に行くまで知らなかったのですが、コラボしたのは日本人のアーティストの方でKaori Kumabara さんという方でした。このライトが、スクリーンで移される画像に合わせて色が変わります。スクリーンが海を映せば、ライトが水色に変わり、一斉にさわやかな海のような印象になり、スクリーンが緑の草原を映せば、ライトが緑に変わり一気に草原になります。その中に流れるなんとも幻想的な音楽と、またスクリーンと合わせて鮮やかに瞬時に変わるライトの色具合がなんともいえない不思議な時間を作り出しています。

この会場には大きなクッションがいくつも置いてあり、見に来ている人たちはそれぞれフロアに座って灯りを見つめていたり、クッションの上に寝転んで不思議空間を楽しんでいました。休日は恐らくとても混むと思うので、クッションの上で寝転んでなんて事はできないかもしれませんが、つかの間でも不思議な空間を味わえてお勧めです。


そして、同時に開催されていた特別展示ではドイツのアーティストのRon Mueck という方の展示です。こちらは8月13日までの開催です。最初この特別展示の知らせを見たときに、巨大な顔のオブジェをわざわざ見に行くか?と思ったのですが、会員費に含まれているので、ついでに見ておこうという軽い気持ちで見てきましたら、とても衝撃を受けました。
このオブジェがなんとも本物同様で、とても細かいところまで人間の皮膚やしわ、髪の毛の一本一本まで作られているのです。 

特に下のあかちゃんのオブジェは、背後にいる女性を見て分かる通り、巨大あかちゃんですが、母体から生まれたばかりの赤ちゃんのオブジェです。生まれたてで、まだ母体をすり抜けて世の中にでたばかりというような赤ちゃんの大変な冒険と苦労が表情に表れています。

何より、私が感動したのは、あかちゃんの体にまとわりつくように残っている血の跡です。子供を産んだ方には当たり前だと思うのですが、子供を産んだことのない私は、子供を産む辛さや痛さはわかりません。でも、この赤ちゃんについている血痕をみて、赤ちゃんが母の体の中を通って、母は自らの血を流しながら子供を世に送り出した強さというか、母の無償の愛というか、命を削って子供を産んだ経路というか、だから母は無条件で子供を愛するのだという事がじんじんと伝わってきました。世の中の母は偉大だなぁと、この赤ちゃんのオブジェからそんな事を考えていました。


尚、この特別展のメインのオブジェはアーティスト本人をまねたオブジェです。巨大な顔だけがそのまま展示されています。が、驚きは、その細かさです。顔の髭の一本一本、そして顔の目のあたりから耳にかけての神経が見えたり、しわや、ほほにあるニキビというか腫れものみたいなものまで作られていますし、耳や鼻毛までつくっています。じっと見ていると、突然目を開けそうなくらいリアルです。 


これらのオブジェ以外にも、感動するくらい細かい描写と、言葉を出さないオブジェでも、その物語やその人物の人生や背景がじんじんと伝わってくるような素晴らしいアートでした。
私は全く期待せずに、ついでという事で見に行きましたが、これは是非見て欲しいと思った展示でした。 

ちなみに特別展はこの二点を見るチケットで$25(一般展示も含め)です。
また一般展示は、毎週木曜日は無料です。一般展示は常時展示されているもののみご覧いただけますが、モネとかルノワールとかの絵画もありますし、古代の埴輪に似たようなメキシコの偶像や、中国やアフリカの装飾品なども展示されていて、かなり見どころがあります。(私は貧乏学生で時間だけある時期には、それこそ毎週のようにモネの絵を見に行きましたので、このモネの絵は他人のものとは思えません(苦笑))
二年後には、更に美術館が拡大するそうですので、ますますヒューストンのアート力は高まってくると思います。


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